遠方で一人暮らしをしている親がいる場合、いざという時にすぐに駆けつけることができません。この度のコロナでより一層そんな心配が増え、
「近居」や「同居」を考えなければと考えた方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな老親(ろうしん)の一人暮らしが抱える問題点と、同居が難しい場合の対応策などについて考えてみましょう。
自分の親には、いつまでも元気でいて欲しいと願うものですが、現実には年を重ねるにつれ体力・気力が衰え、サポートが必要になる機会も増えてきます。
内閣府の「令和2年版高齢社会白書」によると、
高齢化率は28.4%
- 我が国の総人口は、令和元(2019)年10月1日現在、1億2,617万人。
- 65歳以上人口は、3,589万人。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.4%。。ということは4人に一人以上だということですよね。
- 「65歳~74歳人口」は1,740万人、総人口に占める割合は13.8%。「75歳以上人口」は1,849万人、総人口に占める割合は14.7%で、65歳~74歳人口を上回っています。
- 令和47(2065)年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上。 中々大変な数字ですね。

高齢者の一人暮らしの問題点として最初に挙げられるのは、一人の時に助けを呼べないということです。家に一人でいるときに意識を失うなどの非常事態が起きた場合、誰も助けることができません。発見が遅れれば、孤独死という最悪のケースも考えられます。 また、認知症を患っている方の一人暮らしには、本人やご家族も気づかないところで、日常生活にも様々な支障が出てくることがあります。
①火の不始末や戸締りなど
②食生活の乱れ
③服薬管理ができない
④金銭管理ができない(高額商品の購入や詐欺被害なども心配です)
⑤ご近所トラブル
いろいろありますよね。 特に火の不始末や服薬トラブルは命にかかわる問題です。
心配だけど…同居に踏み切れない
それでは、高齢の親との同居に踏み出せない理由には、どんなものがあるのでしょうか。
同居を始めると、あらゆる面でお互い気を遣うことになります。
小さな行き違いや生活に関する考え方、生活のペースなどは、毎日となっては強いストレスになる場合も多いようです。せっかく同居してもお互い居心地が悪くては本末転倒。
介護も必要となれば、負担はかなり大きなものとなります。
同居は、子どものお世話をお願いしたり、家事を分担したりと助かる部分もあるのですが、そのことが子育てや家事のやり方に口出しされるという場合もあります。そして親にとっても、子どもや孫のためにと頑張りすぎてしまい、肉体的・精神的に負担になっていることがあります。 お互いのためをおもってやることが裏目に出てしまうことも少なくないでしょう。
こういったお互いの生活上の我慢や過干渉によるストレスを懸念して、同居を避けるケースが多いと思われます。
また現在は、子どもやその配偶者が「親の呼び寄せ」を考えていたとしても、親本人が同居を望まない場合も多いようです。まだまだ元気で自立した高齢者の場合には、同居せずに自由に過ごしたいと考える方も多いでしょう。 しかしながら、一人暮らしが難しくなった時のために考えていかなくてはならない問題でもあります。
そこで「近居」
「近居」とは、車や電車、自転車、徒歩など交通手段を問わずに、比較的気軽に行き来ができる約30分以内の近さに「親世帯」と「子世帯」が暮らす形。 お互いがサポートしあい、交流を楽しめる暮らし方です。 そして、働くむすめやむすこの子育てや生き方を支えよう、というのが「育孫」。 3世代のよりよい暮らしのために提案する形です。近居は同居よりも、お互いにプライバシーを重視した暮らしができることが魅力。そして、同居と同様に、子世帯は親世帯から子育てのサポートを受けやすく、親世帯に介護が必要になったときにはサポートや見守りをしやすいというメリットがあります。近居には、結婚して親世帯の近くに子世帯が住む「二世帯近居」や、孫のいる子世帯と親世帯が近くで暮らす「三世帯近居」があります。居住形態はさまざまなパターンがあります。よくあるケースは、結婚してアパートに住んでいた子世帯が孫の誕生を機に、妻の実家の近くのマンションを買う、反対に高齢になった親世帯が戸建てを売却し、子世帯の住むマンションの近くの別のマンションを買うといったものです。また、親世帯と子世帯が同じマンションの別の部屋をそれぞれ購入する二世帯マンションも、近居の一つの形です。また、子供の住居の近所の福祉施設へ入所するという場合も考えられます。
少子高齢化が進む中、国や自治体も近居を支援し、独自の補助金制度を設ける自治体もあります。
政府が2015年に一億総活躍国民会議で取りまとめた「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策―成長と分配の好循環の形成に向けて―」では、子育てしやすい環境を整備するため、三世代同居・近居しやすい環境の整備が掲げられました。具体的な近居への支援策としては、UR賃貸住宅を活用したものがあります。子育て世帯や高齢者世帯との同じ団地、あるいは2km以内の別の団地での近居には「近居割」、決められたエリア内で団地とそれ以外の住居に住む場合は「近居割WIDE」の適用が受けられるものです。
官邸|一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策(概要)- 成長と分配の好循環の形成に向けて -
https://www.kantei.go.jp/jp/topics/2016/ichiokusoukatsuyaku/gaiyo20160118.pdf
UR賃貸住宅|近居割
https://www.ur-net.go.jp/chintai/whats/system/kinkyo/
同居をする場合も、近居をする場合も、それぞれのメリットやデメリットがあります。「すぐに同居」ではなく段階を踏んで住まい方を変えることも大切。親世帯にも子世帯にとっても、近くに住むことは育児のサポートや介護の面でメリットがあります。近居は同居よりも、生活リズムやライフスタイルを守って暮らしやすいことから支持されていますが、距離感を適度に保つことが大切です。共働き夫婦が増加傾向にあることからも、近居という暮らし方は今後も増えていくでしょう。一番大事なのは、住まい方のメリット・デメリットをきちんと理解した上で、決断することです。家族で十分話し合って親にも子にも双方にとってベストな選択を見つけてください。