介護保険適用の住宅改修はどんなことができる?

介護が必要になると、購入時のままでは自宅が住みづらいことも少なくありません。より住みやすいバリアフリーの環境にするために、住宅改修を行うことは大切ですが、これには費用がかかります。住宅改修のコストを削減するには、介護保険を利用することがおすすめです。 実際のところこの住宅改修に介護保険が利用できることをご存じない方は結構いらっしゃいます。また、ご存知でも自分はまだ介護保険は関係ないと思っている方も多いようです。

介護保険を利用することで、バリアフリーを目指す住宅改修の費用を補えます。

☑住宅改修を行うメリット
①自宅介護の負担が軽減できる
②バリアフリーリフォームにかかる費用を削減できる
③自立した生活を送りやすくなる
住宅改修を行うことで、介護がしやすい住宅を実現でき、家族や親族などの自宅介護の負担も軽減できますので、住宅改修を行うことで、共倒れのリスクも軽減できます。

☑住宅改修に介護保険を利用する場合に対象となるのは、要支援や要介護の認定を受けている人であり、かつその人が住んでいる自宅を改修する場合です。

要支援は1~2、要介護は1~5のいずれかの認定を受けている必要があり、介護施設に入居している場合などで自宅に住んでいない場合は、利用対象とはなりません。ただし、施設からの退居日が明確になっている場合で、その後改修の対象となる住宅に住む予定があるケースでは、例外として介護保険が利用できることもあります。介護や支援を必要とする人が住む家の改修なら、介護保険の利用ができるため、役所の介護相談窓口や地域包括支援センターなどで相談してみると良いでしょう。

また、実際の生活において介護や支援を必要とする場合でも、介護保険による要介護の認定を受けていないと、適用対象にはならないため注意しなければなりません。認定を受けていない場合は、まずは役所などで要介護認定の申請をしておく必要があります。

介護保険サービス利用までの流れ

☑介護保険による支給額は20万円を限度として、実際の改修工事にかかった費用の1割は自己負担
住宅改修工事にかかる費用が20万円の場合は、そのうちの1割である2万円は自己負担となり、残りの18万円が介護保険から支給されると考えましょう。

自己負担額は利用者の所得によって異なり、自己負担が2~3割となることもあります。この場合も上限額は20万円と同じですが、2割負担なら介護保険からの支給分は16万円、3割負担なら14万円となることも覚えておくことが大切です。

☑住宅改修の利用できる回数は基本1人1回

介護保険を利用した住宅改修は、基本的に1人1回のみ利用できます。そのため、複数回の利用は原則できず、支給額の上限が20万円で変わりないことは理解しておきましょう。複数回にわけてバリアフリーリフォームを行ったとしても、介護保険の支給対象となるのは原則1回のみです。ただし、利用回数は1人1回であるため、例えば要介護認定を受けた父が1回利用し、同じ住宅に住む母が後から要介護認定を受け、さらにもう1度利用することは可能です。その住宅で1回ではなく、そこに住む個人で1回という回数の決まりは把握しておきましょう。

また、限度額の20万円を超えない範囲であるなら、複数回にわけて支給を受けられます。1回の改修金額が20万円以内なら、同じ人が複数回別の改修工事の申請をすることは可能です。

☑利用回数の例外とは
介護保険を利用した住宅改修は原則1人1回となっていますが、例外として再度同じ人が申請できることもあります。これは上限の範囲内で複数回改修工事を行う場合だけではなく、要介護度の変化や生活環境の変化などによって決まります。

利用回数は一定の条件によってリセットされることもあり、この場合はさらに20万円を限度として、介護保険の利用が可能となることは覚えておきましょう。

☑支給額はリセットされる場合があります
住宅改修における介護保険の支給額は、要支援度や要介護度が3段階上がることや、転居することなどでリセットされるケースがあります。

例えば要支援1の人が要介護3になった場合や、要支援2や要介護1の人が要介護4以上になった場合など、3段階以上支援度や介護度が上がることで、再度20万円を限度として、再度住宅改修の利用が可能です。

これは要介護度が大幅に上がることで、安定した生活を送るためにはさらなる住宅改修が必要と認められるからです。また、別の家に転居する場合も、新しい住宅でバリアフリー化が必要と認められると、再度住宅改修の利用ができるケースがあります。

☑住宅改修に介護保険を利用する場合に対象となるのは、要支援や要介護の認定を受けている人であり、かつその人が住んでいる自宅を改修する場合です。
①ケアマネジャー(地域包括支援センター)と相談する

②住宅改修事業者と打ち合わせをする

③住宅改修プランを作成する

④住宅改修の支給申請書類を市区町村に提出する

⑤役所からの審査結果

⑥改修工事を実施する

まずはケアマネジャーや、地域包括支援センターに相談して、どのような住宅改修が必要なのかアドバイスを受けましょう。バリアフリー化を目指すリフォームといっても内容はさまざまであり、利用者の状態によってどの工事が必要かは異なります。そのため、利用者の要介護度や心身の状態、生活環境や家族構成などを詳しく伝え、最適な住宅改修の内容を考えてもらうことが大切です。工事の内容がある程度決まったなら、住宅改修を行うリフォーム業者と打ち合わせを行います。

この際に介護保険制度を利用すること、バリアフリー化を目指すことが主な目的であることなどを伝えて、適切な住宅改修プランを作成してもらいましょう。工事に関する書類や申請書類などを用意し、役所に提出して、申請は完了です。

申請書類を提出し、役所からの審査結果を受けてから改修工事を実施します。基本的には申請後に改修工事となりますが、やむを得ない事情がある場合は先に工事をして、後から申請できるケースもあります。ただし、特別な事情がなければ、改修後の申請は受け付けてもらえず、介護保険が利用できないこともあるため注意しなければなりません。

確実に介護保険を利用して住宅改修をするためには、先に役所にて申請を行うという手順は理解しておきましょう。

☑住宅改修するために必要な申請と書類
介護保険制度を利用するには、役所への申請が必要であり、必要書類を用意しておかなければなりません。工事の前と後それぞれ書類が必要になります。工事前には、次の書類が必要です。

①住宅改修費支給申請書

②住宅改修が必要な理由書

③工事費見積もり書

④住宅改修後の完成予定の状態がわかる資料

住宅改修費の支給申請書は役所にて取得できます。また、理由書は、ケアマネジャー、地域包括支援センター担当職員など限られた人が作成します。工事費の見積もり書は改修事業者が作成したものを使用しましょう。

改修工事の完成予定の状態がわかる資料としては、工事の図面、日付け入り写真などが該当し、これも改修事業者に相談して書類を整えてもらいましょう。

⑤住宅改修にかかった費用の領収書

⑥工事費用の内訳がわかる書類

⑦住宅改修の完成後の状態を確認できる資料

領収書は住宅改修事業者から受け取ったものを使用します。工事費用の内訳がわかる書類は、見積もり書などが該当するため、これも捨てずに保管しておきましょう。完成後の状態が確認できる資料としては、工事の図面のほか、実際に工事を行った場所を撮影した写真(撮影日がわかるもの)なども使えます。

また、利用者以外が所有する住宅を改修する場合は、所有者の承諾書も必要です。例えば子どもが所有している家に介護が必要な親が同居していて、この住宅の改修工事を行う場合は、承諾書が必要と考えましょう。

やむ負えない事情がある場合には、住宅改修が完了した後に①~③を提出することができます。

 

支払いの方法
介護保険を利用する場合の工事費用の支払い方法は、償還払いと受領委任払いの2つがあります。償還払いは、先に工事費を全額事業者へ支払い、後から介護保険による支給を受ける方法です。あとから介護保険からの支給分のお金は戻ってきますが、工事開始にあたっては一時的に全額自己負担で費用を支払う必要があります。

受領委任払いは介護保険の自己負担額、つまり上限を20万円として1~3割までの費用を事業者に支払うというものです。この方法を利用するには、「受領委任払い取扱事業者」に住宅改修を依頼する必要があり、どの業者でも対応しているわけではないため注意が必要です。

☑介護保険の住宅改修ではどんな箇所ができるの?
実際に介護保険を適用して住宅改修を行う場合は、次のリフォームが対象となります。

①段差の解消
高齢者がつまずくことを防いだり、スムーズに移動したりするために段差を解消する改修は、介護保険の対象です。玄関や廊下からリビングへの接続部分、浴室やトイレなどの段差の解消が該当します。また、床の底上げや敷居を下げるだけではなく、スロープの取り付けも段差の解消工事として認められます。

②手すりを取り付ける
体を支えるための手すりの取り付けも、介護保険を使った住宅改修の範囲として認められています。トイレや浴室、玄関など上り下りや立ち座りが必要な場所や、段差がある場所などに手すりを取り付けることで、よりスムーズな移動が可能です。

③床や通路の材料の変更
転倒リスクを防ぐために、床や通路の材料を変更することもおすすめです。滑り止めをつけたり、滑りづらい材料に変更するなどの工事は、介護保険の対象となります。あくまで転倒防止のための改修が対象となり、単に模様替えなどでの床や通路の材料変更は、対象とならないため注意しましょう。

④扉の取り替え
部屋間の移動をスムーズにするには、設置されている扉の取り替えがおすすめです。力が必要でバランスを崩しやすい開き戸を引き戸に変更したり、仕切りをアコーディオンカーテンなどに変更する工事が該当します。また、扉そのものを取り替えるだけではなく、開閉しやすい、あるいは握りやすいドアノブへの変更や、扉をスムーズに動かすための戸車の設置も対象です。

⑤便器の取り替え
立ち座りがしづらい和式便器を、洋式便器に交換する工事も介護保険の適用対象です。また、すでに洋式便器が設置されている場合でも、さらに立ち座りがしやすいものに変更する場合は、介護保険の対象です。

⑥上記の工事に付帯して必要となる改修
上記の工事をするには、壁や床など下地の補強が必要となることもあります。その工事自体は直接バリアフリー化に関係しなくても、必要な工事を行うための事前工事や予備工事なども、介護保険の対象となります。

 

まとめ

住宅改修は一定の条件を満たすことで、介護保険制度を利用できます。介護保険を利用するには、利用者の条件と対象となる工事を行うことが大切です。また、制度の利用には申請が必要であるため、これも忘れずに行いましょう。限度額20万円まで支給が受けられるため、制度を賢く活用することで介護のための住宅改修費用を削減できます。

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