「春に父を思う」 西日本新聞掲載

道端のあちこちに菜の花が咲き始めた。優しい黄色に心が和む。しばらく眺め
ていると、父に会いたくなった。父が春生まれだったからだろうか。
5年前、父は66歳で他界した。実直勤勉で仕事熱心、気さくな人柄だった。
定年後は、まるで仕事のように真面目に母の介護に取り組んだ。

若年性アルツハイマー病の母には、早くから生活面での手助けが必要で、還暦のころには全
てに身体介助を要した。父と私は介護手法を教わり、二人三脚で母の自宅生活を支えた。
必要に迫られてとはいえ、黙々と母の世話に心を尽くす父を、私は今も最高の介護者だと思っている。自分のことはいつも二の次、何より妻をこよなく愛し、大切にした。

そんな姿を見るにつけ、父を尊敬し、大好きになった。
末期癌で長患いもせず、良い思い出だけを残し、駆け足で天国に行ってしまった。

父亡き後の母の介護は前より大変になったが、嘆くつもりはない。
早起きの苦手な私が朝から奮闘する姿は、父にはどう映っているのだろう。

笑いながら応援してくれていると良いのだが。

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