「静かな愛情物語」 読売新聞掲載

リハビリ室の前で、その女性は夫の訓練の様子を静かに見つめていた。

軽く挨
拶する私に「長い人生、いい時だってあったんよ。あの人は、真面目で病気ひ
とつせずよく働いてくれた。

だから今度は私が頑張って支える番。なんたって
愛するハズバンドやからね。」と笑いかけてくれた。

気持ちがほっとするような優しくて力強い笑顔だった。これが「かほるママ」との出会い。以来、親しくなった。年は私の母と同じくらい。

気さくで温かな女性だ。私たちは毎日病院に通っている。

かほるママは夫、私は母の元へ付き添いに。お互い皆勤賞ものである。
「くたびれるねぇ。」とぼやくかほるママに「家で一日ゆっくりしたら」とい
うと「家にいたって気になるから、顔を見に来たほうが安心や。」と即答され
る。

病人の家族は皆同じようなもの。どうしても自分は二の次になる。

わかるから、それ以上言わない。もう金婚式は過ぎたというお二人にとって、病室で
のひとときは何より大切なのだ。

毎日穏やかでありますようにと祈り、この静かな愛情物語をそっと応援している。

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