終活準備という観点からの任意後見契約
任意後見契約とは?
十分な判断能力がある内に判断能力が低下した時に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(=任意後見予定人)に財産管理や身上監護などの代理権を与える契約を、公正証書で締結する契約です。

しかし、任意後見契約にもメリット・デメリットがあります。
判断能力が低下しなかったら?
死後の事も任意後見で可能?
あなたの判断能力が低下した事を任意後見予定人はどうやって知る?
判断能力が十分にある内から任意後見契約で財産管理を任せられる?
メリット
①任意後見人を自由に決められる。
②後見予定人に与える権限の範囲を決められる。
③効力がスタートした時、家庭裁判所で任意後見監督人が選出され任意後見人の仕事ぶりをチェックしてもらえる
デメリット
①法定後見制度のような、取消権がない
②あなたが亡くなった時点で終了
③任意後見(予定)人及び任意後見監督人は、身元保証人にはならない
つまり一人暮らしシニアの方は、任意後見契約だけでは不十分です。なぜなら、②や③が補えないからです。

独り暮らしの場合は、任意後見契約に加えて下記の2種類もしくは3種類の契約が必要です。
①見守り契約~判断能力が低下していないかを見極める面談
任意後見契約は、あなたの判断能力が低下した時に家庭裁判所へ申し立てを行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が発揮され、後見が開始されます。
とはいえ、判断能力が低下した事を予定人はどうやって知るのでしょうか?
任意後見契約とセットで、予定人と見守り契約の締結が必要です。この契約によって定期的に様子を伺うことにより、任意後見予定人が任意後見契約をスタートさせる時期を的確に捉える、見逃さないことが目的の契約です。もちろん、一般的にはこの見守り契約にも別途費用が必要です。
②死後事務委任契約~死後手続きもお願いしておくための契約
任意後見契約はあなたが亡くなった時点で終了します。では、その後の葬儀や納骨は?家財処分は?死後の手続きは?死後事務は50~60項目あるといわれていますが、その執行のために任意後見予定人と、任意後見契約とセットで、死後事務委任契約を締結をお勧めします。この死後事務委任契約にも一般的には別途費用が必要です。
尚、遺産分割など財産に関する事は死後事務委任契約でもできません。遺言が必要です。
③財産管理委任契約~頭ではなく身体が不自由になった時の契約
任意後見契約はあくまで判断能力が低下した時から始まります。では判断能力ではなく、何らかの理由で体が不自由になった時は任意後見契約は効力を発揮できません。
そんな時のために、任意後見契約の主たる役割である財産管理については、判断能力があっても、今から任意後見予定人に任せたい時にこの財産管理委任契約を結びます。

独り暮らしの場合は、一般的に言われる任意後見契約だけでは一人暮らしにとっては不十分なのでこの2~3種類の契約が必要です。
「もしもの時」に、あなたの意思・権利を代弁し、「死を迎えた後」に、死後事務などを実行してくれる「誰か」です。
まずは、自分自身の現状を自身が把握することが大切です。代理権の範囲を決めるためには、財産種別や現状生活における支払い先、もし施設に入る状況になった時の自身の考えなど、自身が把握しそれを伝えなければ予定人は分かりません。
任意後見(予定)人は、身元保証人・身元引受人・連帯保証人にはなれないので、一人暮らしシニアは、任意後見契約だけではなく、他にも終活の準備が必要です。
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追加情報
1)成年後見制度の理念
ノーマライゼーション:どんな人も地域で普通に生活ができることが当然である考え
自己決定権の尊重:自分らしく。本人の決定をみんなが尊重しよう
現有能力の活用:能力が低下しても、できることは自分で
本人から全ての権利を奪ってしまうものではありません。自己決定権が尊重されています。
2)施行
この制度は介護保険制度と併せて、2000年4月に改正成年後見制度として施行されています。
3)任意後見契約費用
公正証書作成にかかる費用としてはおよそ2万円程度。後見人を弁護士や司法書士に依頼する場合は、別途報酬が必要になることが多いです。
4)任意後見の報酬
報酬も当事者間で決めます。(法定後見の場合で目安として1~3万円/月程度)。しかし任意後見契約で報酬が発生する時期は、あくまで後見が開始されてからです。尚、報酬は任意後見監督人にも必要です。