先進国、特に超高齢社会を迎えている日本では、健康寿命の重要性が高まっています。口腔機能は、健康寿命と関連性が高いことが明らかになっており、「オーラルフレイル(口腔機能の些細な衰え)」の人は、2年後のフレイル・サルコペニアのリスクが2倍以上であること、4年後の要介護・死亡のリスクが2倍以上となることが明らかとなっております。
一方で、口腔機能の維持、改善方法については口腔体操と歯科治療のみとなっていました。そこで、本研究では新たな習慣化しやすい口腔機能のトレーニングとして、ガム噛み習慣の健康効果を確認すべく、横断的な検証を行いました。
【対象】自立高齢者(65歳以上)1,474名(横断的研究)
【方法】参加者のうち、30分/週以上ガムを噛んでいる人をガム噛み習慣群として、非ガム噛み習慣群と様々な
健康状態について比較しました。
■研究結果
ガム噛み習慣群では、咬合力や咀嚼力など、さまざまな口腔機能が有意に高いことが明らかになりました。また、オーラルフレイルの有症率についてもガム噛み習慣群で有意に低いことが明らかになりました。
その他にも、口腔機能のみならず、認知機能検査の点数などの認知機能や、握力や身体的フレイルのチェックリストの該当数などの身体機能についても、ガム噛み習慣群で有意に高いことが明らかになりました。
- 東京大学高齢社会総合研究機構 飯島勝矢機構長コメント
オーラルフレイル対策で重要なことは「口の中を清潔に保つ(口腔衛生)」と「口の機能を維持する(口腔機能)」になります。ほとんどの方が歯磨きなどの口腔衛生については意識していると思いますが、意外と噛む力などの口腔機能について、しっかりと対策されている方は少ないかと思います。
体の筋肉と同じく、お口の筋肉も使い続けなければ衰えてしまいます。毎日の食事で噛み応えのある食事を食べることでも口腔機能が維持・向上されますし、今回のようにガムを噛むこともよい影響を与えるかと思います。
オーラルフレイルも身体的なフレイルも自分の生活に取り入れやすい一工夫が重要になっています。ぜひ、ガム噛み習慣や口腔体操などを少しずつでも、日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
プロフィール:
東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長、未来ビジョン研究センター 教授
まちづくりを通しての虚弱予防・サルコペニア予防、在宅医療推進を軸とした地域包括ケアシステム構築、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に向けた研究など、健康長寿社会の実現に向けた研究を幅広く推進している。
<研究結果概要>【掲載紙】Geriatrics & Gerontology International (2023年12巻20号6534)タイトル:Relationship between a gum-chewing routine and oral, physical, and cognitive functions of community-dwelling older adults: A Kashiwa cohort study (地域在住自立高齢者におけるガム噛み習慣と口腔、身体、認知機能との関係:柏スタディ)著者:川村 淳、田中 友規、菅野 範、大澤 謙二、岡林 一登、平野 浩彦、白部 麻樹、永谷 美幸、孫 輔卿、 呂 偉達、飯島 勝矢 【研究背景・目的】 先進国、特に超高齢社会を迎えている日本では、健康寿命の重要性が高まっています。口腔機能は、健康寿命と関連性が高いことが明らかになっており、「オーラルフレイル(口腔機能の些細な衰え)」の人は、2年後のフレイル・サルコペニアのリスクが2倍以上であること、4年後の要介護・死亡のリスクが2倍以上となることが明らかとなっております(※1)。 口腔機能の維持、改善については口腔体操があげられますが、口腔体操を習慣化することは難しいという問題がありました。そこで、本研究では新たな習慣化しやすい口腔機能のトレーニングとして、ガム噛み習慣の健康効果を確認すべく、横断的な検証を行いました。 【研究方法】 ■対象:自立高齢者1,474名(横断的研究) ■内容:1週間のガム咀嚼時間を聞き、30分/週以上ガムを噛んでいる人をガム噛み習慣群として、 非ガム噛み習慣群と様々な健康状態について比較した。 【結果・考察】 地域在住自立高齢者において、ガム噛み習慣群では咬合力、咀嚼能力などの口腔機能が有意に高く、オーラルフレイルの有症率も有意に低かった。また、口腔機能のみならず、握力やバランス能力(開眼片足立ち)、通常歩行速度などの身体能力も有意に高く、フレイルの判定にも用いられる基本チェックリストの該当数も少ないなど、身体機能も高く、認知機能テストであるMMSEの点数も有意に高かった。この結果から、ガム噛み習慣を促進することはオーラルフレイル予防や多面的なフレイル予防のための健康増進に役立つ可能性が考えられます。 参考文献※1) Tanaka T, Takahashi K, Hirano H et al. Oral frailty as a risk factor for physical frailty and mortality in community-dwelling elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2018; 73: 1661–1667.. |
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株式会社ロッテでは、様々な自治体や研究機関・企業と連携し、最適な“噛む”を提供することで、皆さまの力になりたいと考え、『噛むこと研究部』を設立しています。噛むことが、脳や心、身体にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的に活動を行っております。「お口の恋人」として今後も皆さまに寄り添い、噛むことの研究を進め、有効性を広く啓発してまいります。
また今後、その研究成果を本リリースのような形で発信し、噛むことが生きる活力となりえる情報をご提供してまいります。ぜひご期待ください。
▶噛むこと研究室ホームページ https://www.lotte.co.jp/kamukoto/