シニアは花粉症にならない…は誤解?シニアの花粉症に関するアンケート調査とアレルギー専門医に聞く今年の傾向と対策

いよいよ本格的な花粉シーズンが到来します。以前から花粉症を自覚している人はもちろん、花粉症は年齢を経てから発症する人もいるので、現在症状がない人も体調に注目しておきたいものです。原因不明の体調不良が、実は診察を受けたら花粉症の症状だったと発覚する人もいます。

 株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、代表取締役社長:出雲充)は、年々高齢化が進む日本において、シニアの花粉症との向き合い方に注目しました。「シニアは花粉症にならない」という通説を耳にすることもあると思いますが、それは果たして事実なのでしょうか?

当社は、2023年12月に、全国の60歳以上の花粉症の男女300人を対象に、花粉症に関するアンケート調査を実施しました。また、シニアの花粉症について、耳鼻科医・アレルギー専門医の瀬尾 達(せお・わたる)先生に、今年の傾向と対策を伺いました。

 「何歳から花粉症になりましたか?」という質問に対して、「60代以上で発症した」という人は29.3%となり、約3割の人が60歳を過ぎてから発症していることがわかりました。次いで30代で発症(19.7%)、20代(15.7%)、40代(17.3%)と続き、花粉症の発症はどの年齢でも起こりうることがわかりました。

 花粉症によっておこる日常生活の困りごととしては、「鼻が痒くなる」(109人/300人中。以下同)、「鼻づまりが強く、夜なかなか眠れない」(92人)、「普段マスクをしていなかったがせざるを得ない」(78人)が上位となりました。また、「外出を控えてしまう」(31人)や「普段やっているウォーキングやランニングといった習慣を控えてしまう」(13人)という回答も一定数あり、花粉症をきっかけに運動不足や運動習慣が断絶されてしまうことも懸念されます。

 シニアの花粉症に関する今年の傾向と対策について、耳鼻科医の瀬尾 達(せお・わたる)先生に伺います。

監修

瀬尾記念会 瀬尾クリニック 耳鼻咽喉科医・アレルギー専門医 瀬尾 達先生

大阪星光学院高校から兵庫医科大学医学部卒業、京都大学医学部大学院修了。日本耳鼻咽喉科学会 専門医、厚生労働省指定臨床研修医療機関 指導医。瀬尾クリニックでの診療の他、京都大学医学部、兵庫医科大学、大阪歯科大学、兵庫県立大学などで講師を務め、瀬尾クリニックでも、臨床研修医や医学生の教育を行っている。

「シニアは花粉症にならない…」は、誤解。

花粉症やアレルギーは、シニアになるともうならない(若いうちにしか発症しない)、といった思い込みがある方もいるようですが、調査の結果でも出ているように、これは誤りです。

かつては、花粉症を発症しやすい年齢は、幼児と高齢層を除く年齢層という傾向もみられましたが、最近では花粉を抗原とするアレルギー鼻炎は、低年齢から高齢まで、年代を問わず発症率が増加しているといえます。75歳以上の後期高齢者でも一定数発症する人がいます。

実は医学的な診断の仕方が10年以上前と現在で変わったということが大きな要因です。10年以上前は、耳鼻咽喉学会やアレルギー学会などにおける共通見解としても、アレルギー反応が若い層に比べて弱いといわれる65歳以上の方に鼻水やくしゃみ等の花粉症と同じ症状が現れた場合に、「花粉症」ではなく「血管運動性鼻炎※」という診断がなされるのが一般的でした。現在は、抗原が花粉だと特定できれば、年齢問わずに「花粉症」と診断されるようになりました。            

※ 寒暖差などに由来する自律神経の異常によって、鼻炎の症状を示す病気。いわゆる寒暖差アレルギー

また、これは年齢層を問わずですが、単純に花粉症という疾患の認知度が上がったこともあり、症状が出ている人が花粉症を疑って積極的に診療を受けるケースが増えたことも、花粉症患者増加の要因のひとつでしょう。 

通常約8~9割の患者さんは花粉症を疑っても自己診断や市販薬品などで済ましてしまい、耳鼻咽喉科・アレルギー専門科の診療を訪れる方はわずかである印象です。

花粉症の「コップ理論」と「シーソー理論」、どちらが正解?  

年齢を経て初めて花粉症を発症するという傾向に関して、その要因は長きにわたって研究されてきています。従来は「コップ理論(学説)」と呼ばれる、コップの容器に水を注ぎ、一定量を超えると水が溢れるように、一定量以上の抗原(花粉)が身体に入ることでアレルギー症状が出現するという理論が主流でした。

しかし、近年では、花粉の飛散量やストレスが増して、身体の持つ抵抗力を上回るとシーソーが大きく傾き、アレルギー症状を発症する、つまり、免疫バランスが崩れるとアレルギーを発症するという「シーソー理論(学説)」のほうが適切なのでは、と唱える医師も増えています。

コップ理論だと、花粉症を発症してから年数を重ねると症状が重くなりそうなものですが、実際は身体の抵抗力を大きく上回る花粉の量(抗原)が飛散することで免疫が過剰に反応し、抗体が過剰に産生された結果アレルギーが発症する、と考えるシーソー理論のほうが理に適っています。シーソー理論では、免疫バランスのまだ整っていない小さい子供、ないしは加齢とともに免疫バランスが崩れるシニアが花粉症を発症することの説明もつきます。

2024年の花粉症の傾向は例年より早い

花粉は前年の気候に影響されます。2023年は夏が暑く、雨が少なかったので着花が少なく、飛散する花粉の量自体は少ないと想定されるのですが、2023年の12月下旬から、前駆症状(むずむずするかゆみなど、「即時相」といわれる、花粉を吸って比較的すぐに出る症状。反対に、数時間から数日経って反応が出る鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなどの症状は「遅発相」と呼ばれる)で診療に来る人が見受けられるので、流行時期が早い印象です。

新型コロナウイルスの流行がひと段落してマスクを着用しなくなった等の環境の変化も、免疫バランスの崩れなどを招いている可能性があると思います。花粉の飛散量が話題になることが多いですが、花粉の量が患者さんの自覚症状にそのままむすびつくわけではなく、その人その人の免疫状態との兼ね合いで症状の差が出ます。 

花粉症の症状を軽くするための生活習慣

基本的なことですが、質の良い睡眠を十分にとり、バランスよく食事をして、ストレスを溜めないということが基礎です。

睡眠時間は、シニアの場合はできれば良質な睡眠を8時間はとりましょう。時間的に不規則な生活や、アルコール飲料は免疫機能を低下させるので控えるのがおすすめです。

おすすめできる食品としては、乳酸菌をとれるヨーグルト、抗ヒスタミン作用が期待できるDHA・EPAが豊富なサバなどの青身の魚、免疫バランスを整える効果がわかっているパラミロンという食物繊維の一種を含むユーグレナ、ビタミンC、食物繊維、免疫ビタミンとも呼ばれるLPS(リポポリサッカライド)を含むレンコンやゴボウ、ポリフェノールを含むチョコレート、クエン酸を含む梅干しなどがあります。

またユーグレナは、スギ花粉症の症状を緩和する可能性も示されています。

適度な運動はストレス解消にもつながり、ぜひ習慣にしてほしいです。

無酸素運動である筋力トレーニングなどよりも、ヨガやストレッチといった有酸素運動がおすすめ。

花粉症は交感神経と副交感神経のアンバランスも発症の原因です。運動自体は、どちらかというと交感神経を優位にする行為なのですが、無酸素運動は交感神経のみを強く刺激し、副交感神経を抑制してしまいます。なるべく交感神経と副交感神経の両方を高められる有酸素運動を心がけましょう。継続することが大切なので、時間は5分程度で構わないので、できるだけ毎日行いましょう。

運動は夜ではなく朝や昼にするのが、日中の行動時の交感神経を活発にしてくれるのでおすすめです。

花粉の物理的なガードを徹底するテクニック

マスクやゴーグルなど、抗原の除去隔離を目的とした工夫をする方も多いですが、どんなに努力しても完全に取り除くことは難しいです。ただ、花粉がついたマスクやゴーグルをこまめに取り換えることは非常に有効。マスクやゴーグルは立派なものを終日つけるより、安価なものを複数用意しておいて、数時間ごとに取り換えるのがおすすめです。

洋服の花粉をブラッシングで除去する方は、ブラシ自体に花粉が付着してしまい再度使用するときに服を再汚染してしまう可能性があるので、ガムテープを利用してきてください。粘着力も高く、1度使用したらそのまま捨てられるので花粉の再汚染のリスクがありません。

花粉症は正しい対策や免疫バランスを整える努力で症状を軽減できる可能性がある病気です。花粉の本格シーズンインに備えて、ぜひ、健康的な体作り、万全なガード対策を心掛けましょう。

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