解っているようで知らない、火葬式の参列マナー

現代の日本では、故人を火葬して弔うのが一般的です。今回は火葬の流れと当日必要なものを解説します。
火葬を行う際の決まりごとと、参列時に気をつけるべきこともまとめました。
「前火葬」「骨葬」をする地域も
通夜式や葬儀式の前に火葬する形式は「前火葬」「骨葬(こつそう)」と呼ばれ、お葬式でご遺骨を祭壇に置いて供養します。
前火葬・骨葬は東北地方などでよくみられますが、これには地域の特性が関係しているといわれています。交通が発達していなかった昔、雪深い地方では人が亡くなっても親族たちはすぐに駆けつけられませんでした。人を待っているとご遺体の腐敗が進んでしまうため先に火葬し、お骨にしてお葬式をあげたそうです。その風習が残り、一部地域では今でも前火葬を行っています。
死後24時間以内は火葬できない
日本には「墓地、埋葬等に関する法律」があり、“死後(または死産)から24時間を経過しないと火葬できない”ことになっています。これは、“万が一、蘇生するかもしれない”という可能性をゼロにするためです。 医療技術が発達していなかった昔は、ごくまれではありましたが蘇生するケースがあったそう。そのため、ご遺体に紫斑がでて確実に死亡が確認できる24時間を待って火葬をしていました。
医療が進化した現代では死亡した方が蘇生することはありえませんが、法律によって24時間は火葬できません。ただし、指定感染症で亡くなられた方や妊娠7ヶ月に満たない死産のケースでは、この24時間ルールは当てはまりません。
火葬場には公営と民営があり、火葬料にも違いがあります。
ご遺体を火葬する火葬場は各地にあり、そのタイプは大きく公営と民営にわかれます。

公営の火葬場の特徴と火葬料について
公営の火葬場は自治体が主体となって運営し、各市町村に設備されています。火葬場のある自治体に住民票があれば誰でも利用でき、火葬料も比較的に安価。そのため人気が高く、希望の日時に予約がとれなかったり、順番待ちになってしまったりすることもあるようです。

【目次】

火葬の手順と、当日必要なものは?
火葬の決まりごとと注意点
火葬の手順と、当日必要なものは?
火葬は、お通夜と葬儀告別式を終えたあとに行われるケースが多いです。火葬場への持ち物と当日の流れは以下を参考にしてください。

■当日の持ち物
・火葬許可証
(死亡届の提出時に申請すると受け取れます。一連の手続きは葬儀社で代行可能です)
・位牌
・遺影
・骨壷や骨箱
・お茶やお茶菓子
(飲食物の持ち込みができない火葬場もあるため事前に確認しましょう)
・数珠
・ハンカチ
・心づけ 
火葬に際しては、火葬場のスタッフや霊柩車などの運転手に心づけを渡しましょう。金額の相場はそれぞれに3~5千円程度です。
公営の火葬場では心づけの受け取りが禁止されているため、渡してはいけません。

火葬の流れ。あらかじめ知っておくと安心です。
火葬場ではご遺体を火葬するだけではありません。「納めの式」や「拾骨」など火葬以外のことも行なわれます。

火葬場はご遺体との最後のお別れとなる大切な場所なので、そこでのふるまいがわからないと落ち着かないし、しっかりお別れもできません。よくみられる火葬の流れをご紹介しますので、あらかじめ把握しておくことをおすすめします。

■火葬の流れ
1.出棺
葬儀・告別式を終え、葬儀場から火葬場までご遺体を搬送するために出棺。ご家族や葬儀社の担当者など6人〜8人でお棺を担ぎ、霊柩車や寝台車に乗せます。このとき、故人が家に帰って来ないようにとご遺体の足がある向きから入れる地域もあります。
また、出棺時には喪主が位牌を、喪主の次に故人と縁の深いご家族が遺影を手にします。葬儀場に同行しない方はここで故人とのお別れになるので喪主から参列者へあいさつし、参列へのお礼なども伝えます。

2.火葬場へ到着
火葬するためには、自治体が発行した「火葬許可証」が必要。こちらは市町村役場で入手できます。「死亡届」を提出するとき、「火葬許可申請書」にも記入して申請しましょう。その場で発行してもらえるので受け取り、なくさずに保管して火葬場へ持参してください。火葬場へ到着したら、まず係員に火葬許可証を渡します。
これらはほとんどの葬儀社で代行してもらえます。

3.納めの式
ご遺体を火葬する前に、火葬炉の前で「納めの式」という故人とご家族が最後のお別れをする儀式を営みます。 火葬炉の前にお棺を置き、設置した祭壇(机)に持参した位牌と遺影を飾ります。準備が整ったら納めの式がはじまり、僧侶による読経や焼香が行なわれます。その後、喪主やご家族など参列者が順番に焼香。お棺の窓から故人と最後のお別れをし、全員で合掌してお棺が火葬炉に運ばれるのを見送ります。
地域によっては火葬場で拝顔できない場合がありますので葬儀社の方に確認しておくとよいでしょう。

4.火葬
お棺が火葬炉のなかへ納まると火を入れ、ご遺体を火葬します。火葬の時間は1時間〜2時間半程度かかるのが一般的。ご家族など参列者は控室に移動して待機します。 控室で待っている間は、参列者に持参したお茶やお茶菓子をふるまいます。とくに火葬場までご同行いただいた僧侶は手厚くもてなしてください。
とはいえ、飲食類を持ち込めない火葬場もあります。葬儀社へ事前確認しておくといいでしょう。また、地域によっては、一旦、葬儀場に戻って精進上げをしてから収骨のために火葬場へ戻るという風習もあるようです。

5.骨上げ
このとき行なわれるのが、「骨上げ」という儀式。故人が三途の川をきちんと渡れるように箸渡し(橋渡し)をするという意味があり、2人一組で長い箸を使ってひとつのお骨を拾い上げ、骨壺へと納めます。(箸渡しをしない地域や宗派もあります)
骨上げする遺骨の順番は足→腰→胸→背→腕→のど仏→頭とつづくのが一般的で、骨壺の中で立っている姿で納めます。尚、故人ともっとも縁の深かった人が“のど仏”を骨壺に納め、頭骨で蓋をして終了します。
また、ご遺骨は、すべてのお骨を納める全拾骨と、一部のお骨のみ納める部分拾骨があり、どちらを選択するのかは地域によって異なります。一般的には東日本は全拾骨、西日本は部分拾骨だといわれています。

(7)埋葬許可証を受け取り
火葬が終了すると、火葬場に提出していた「火葬許可証」に“火葬済”の印が押されて返却されます。この書類が「埋葬許可証」になります。埋葬許可証がないとお墓への納骨ができないので、火葬場で必ず受け取ってください。
また、ご遺骨を2ヶ所以上で納骨する分骨には分骨用の証明書が必要です。希望する方は、葬儀社へ事前にご相談ください。
骨壺は喪主が自宅に持ち帰ります
ご遺骨を納めた骨壺は喪主が自宅へ持ち帰り、納骨まで後飾り祭壇に飾ります。骨壺はずっしりとした重さがあり、陶器製のものも多いので落としたら割れてしまいます。両手でしっかり抱えてもち、移動する車のなかでも座席に置かないでください。喪主が高齢で持ち運びに不安があるようなら、ほかの人に手伝ってもらってもいいでしょう。また、火葬場に来るときに喪主が手にしていた位牌は、ほかのご家族がもちます。

火葬場は神聖な場所です。
ほかのご家族も利用しており、悲しみの場。スマートフォンで気軽に撮影できるため、故人との最後のお別れを写真に残しておきたいという気持ちをもってしまうかもしれません。しかし、火葬場での写真撮影はマナー違反、絶対に止めましょう。 ほとんどの火葬場で写真撮影は禁止されていますのでルールに従ってください。

また、ご遺体を火葬している1時間〜2時間、参列者は控室で待つことになります。控室ではお茶を飲んだりお菓子を食べたりしながら、おしゃべりすればいいのですが、騒いではいけません。大きな声で話したり、外に響くような笑い声を立てたりするのはマナー違反です。控室では、故人の思い出や生前のエピソードなどをゆったり語り合いながら過ごすといいですね

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