☆「がんばって」の励ましは思うようには届かない
☆大切なのは、親の心の内を理解すること
☆静岡がんセンターの1万人のがん患者さんの声からわかった悩み第1位は「不安などの心の問題」
☆寄り添うとは、じっくり聴くこと、アドバイスしないこと
親ががんと診断されたら、子どもは大きなショックを受けるでしょう。病状はどう進み、治療はどうなるのか、看病のために何をしたらいいのか、親にどんな言葉をかけたらいいのか。戸惑う人も多いでしょう。
親自身も、表情や言葉にはあまりあらわさないかもしれませんが、心身ともにダメージを受けて大きく動揺しています。
親は表情や言葉にはあらわさないかもしれません 子どもとしてはなんとか親を元気づけようとしても、励ましやなぐさめの言葉が逆効果になることもあります。「がんばって」の言葉が思ったように届きません。一方で、気をつかって腫れ物に触るように接すると、かえって親が孤立感を深めることになってしまいます。
プライドを大切にしている親なら、病気に関して、子どもには心を開かないこともあるかもしれません。
遠くに離れて住んでいる親子ならなおさらです。親のことは、子どもは案外何もわかっていないものです。
それでも少しでも親の力になりたい……そんな人は、がんになった人の生の声に耳を傾けることが、親の気持ちを汲み取るヒントになるでしょう。
離れて住んでいる親子ならなおさら、親のことは何もわかっていないかもしれません
過去数十年にわたって、1万人以上の患者さんから集めた声や悩みについて調査研究を行った静岡県立静岡がんセンターによると、がん患者さんの悩み全体の約半数を占めるのが「心の苦悩」(不安などの心の問題)でした。また、注目したいのは、「子どもや家族が心配」「子どもや家族に迷惑をかけたくない」という声が非常に多いことで、悩み全体の順位で第3位に位置しています。がん患者さんの生の声を、本書から抜粋してみましょう。
『親ががんになったら読む本』p38ー39
がんになった患者さんを看病する家族にとって、一番大切なのは、患者さんの心のうちを理解することです。
親の気持ちをよく理解して、その心に寄り添い、ともに歩いていくつもりで接することができればベストでしょう。
ありがちなのは、心配するあまり、子どもが医師の代弁者のようにふるまうこと。
「先生が我慢するしかないって言ったでしょ!」
「効果が出るか出ないかやってみないとわからないでしょ!」
という突き放した言い方は、誰のためにもなっていません。
患者さんに寄り添うとは、じっくり聴くこと。気持ちを受け止めるだけでいいのです。アドバイスはいりません。家族が苦しみを分け合うことで、患者さんの闘病意識が高まります。
じっと見守るということは、大変つらいことかもしれません
時として、そばに寄り添って、じっと見守るということは、家族にとっても大変つらく、子ども自身の心も傷つくかもしれませんが、患者さんにとってはそれが大きななぐさめになりパワーになるのです。
『親ががんになったら読む本』は、患者家族支援における先駆者として評価される、静岡がんセンターの経験をもとに書かれています。2015年刊行の同名の書籍に、「診療プロセスの中で家族と患者さんが知りたいと思うこと」など最新の話題をプラスして再編集しました。がんになった人の心の支え方を中心に、高齢者のがん治療や、信頼できる情報収集源リストなど最新情報を盛り込んだ、きめこまかい内容の1冊です。
- Contents
第1章 がんになった親の気持ちを知る
第2章 親とのコミュニケーションを上手にとる
第3章 がんの診療プロセス
第4章 高齢者のがん治療とは
第5章 医師・スタッフとのコミュニケーション
第6章 がん治療にかかる医療費
第7章 家族ができること~治療に伴う注意事項
- 著者プロフィール
山口 建
静岡県立静岡がんセンター総長
慶應義塾大学医学部卒。国立がんセンター(現・国立がん研究センター)研究所副所長などを務め、1999~2005年に宮内庁御用掛を兼務。静岡県立静岡がんセンターの設立に携わり、2002年、初代総長に就任、現在に至る。厚生労働省がん拠点病院検討会委員を経て、2018年6月からがん対策推進協議会会長。
- 書籍情報
『親ががんになったら読む本』 主婦の友社 A5判・176ページ 定価:1400円+税 ご購入は↓↓ |
親ががんになったら読む本 |