山﨑健太郎デザインワークショップが設計した八千代市のデイサービスセンター「52間の縁側」が2024年日本建築学会賞(作品)を受賞。グッドデザイン大賞、JIA日本建築大賞に続く3つ目の受賞。

地域みんなの居場所である老人デイサービスセンター

山﨑健太郎デザインワークショップが設計したデイサービスセンター「52間の縁側」が、『2024年日本建築学会賞』を受賞いたしました。建築分野で栄誉ある賞と言われる、2023年のグッドデザイン大賞、JIA日本建築大賞(JIA:日本建築家協会)に続き、3つ目の受賞となります。これにより同作品で史上初の3つ同時受賞となりました。


2024年度「日本建築学会賞(作品)」受賞

2023年度「JIA日本建築大賞」受賞

2023年度「グッドデザイン大賞 内閣総理大臣賞」受賞

日本建築学会(AIJ)一般社団法人日本建築学会

日本建築学会賞とは

1949年に「論文」「作品」部門から始まり、現在では「技術」「業績」部門も設置されています。建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達、日本の建築文化を高める目的で、建築に関する特に優秀な業績を表彰するもので、日本で最も権威ある建築賞とも言われています。

審査講評(日本建築学会HPより引用)

 建築とは建築物その物のみならず、その成り立ち総体なのだ。としたら、この作品の「総体」は広く曖昧に広がっている。用途はデイサービスセンターであり、学童、更生施設、ゲストハウス、カフェ、誰もが地域で死にゆく時間を支える場、そして、多分それだけでもない。補助金予算は小規模デイサービスとして申請用途に対して適切である一方で、運営者は用途や計画の対象を明確に区切らず、地域の不安や寂しさに包含的に寄り添う態度を貫く。

 すなわち計画の固定化を後押しする明確な用途、予算、スケジュールはこの作品の背景には存在しない。この動的な状況を受け入れた時に設計者はおおらかな縁側にその在り方を委ねた。敷地は古い郊外の団地に隣接する小学校の裏山の上、緩やかにうねる尾根の上にあり、子供たちの往来は山肌のトトロ道と呼ばれる細く暗い山道から、デイサービス利用者は台地上の車道からとなる。地理的なエッジに沿うように計画された建築は、水平に伸びる奥行き2.5間、長さ 42間の単純反復するスカスカの架構によるもので、尾根下から吹きあげる風が2.5間をすーっと通り抜けてゆく。その長大架構に取り付く3つのボックス状の室内空間がそれぞれカフェ、デイサービス、風呂である。このほぼ外部空間の建物は一見上棟式を待つ構造体のようにも見えるのだが、アプローチから床下をくぐり庭へと回り込めば、小さなブランコが高床の下にぶら下がり、野良仕事をする人、縁側に座る親子、小さな室内では認知症の方や老人が話し込んでいる。簡素なディテールが人々の参画を誘い、利用者の痕跡がすでに蓄積し始めた賑やかな空間だ。一直線のはっきりとした構造体が、波打つ尾根を浮かび上がらせ、子供たちと老人を出会わせ、参画を引き受ける土台=縁側として、建築的態度を地域に示している。

 一方で高齢者施設の設えとしての基本的な温熱環境、設備、平面計画や風呂利用者のプライバシーへの配慮など気になる点もある。審査では通常求められるこれらの対策が不在であることを認めつつ、サービスの隙間が人々の参与を生む状況やその関係性を丁寧に議論することで、新たな評価軸を探す作業でもあった。それは建築単体のクオリティや問題解決能力という従来の評価軸をソフトウェアであるコミュニティや参画性へと拡張する試みであり、建築が、その統合性という性質を土台としてソフトウェアをも計画に取り込み、コミュニティ形成を促し、連携や主体的な参画が、従来建築が単体で負っていた問題解決力を補完し、同時に地域や関係者といった成り立ちをも幸福にする存在になり得ることを、確認する試みでもあった。

 本来、建築とは揺らぐ動的世界から直接に編み上げる祝祭的なものでもあった。背景に寄り添い、硬直する建築を柔らかくほどく今作品は、議論を引き出すのみならず広く動的世界を包含した高度な建築である。

 よって、ここに日本建築学会賞を贈るものである。


誰にとっても居場所となるみんなのリビング
ごちゃ混ぜケアと地域を結ぶ縁側には、懐かしい日常の風景が生まれる

名 称:52間の縁側

事業主:有限会社オールフォアワン 石井英寿

設 計:株式会社山﨑健太郎デザインワークショップ 山﨑健太郎

    株式会社多田脩二構造設計事務所 多田脩二

    ぼんぼり光環境計画株式会社 角舘まさひで

    稲田ランドスケープデザイン事務所 稲田多喜夫


山﨑健太郎デザインワークショップ

沖縄の地域住民と琉球石灰岩を積んで建設した「糸満漁民食堂」をはじめ、斜面を活かした階段状の「はくすい保育園」、日常を感じるコモン型の「新富士のホスピス」、地域みんなの居場所である「52間の縁側」等でJIA日本建築大賞、グッドデザイン大賞、日本建築学会作品選集新人賞、iF DESIGN AWARD Goldの他、国内外のアワードで受賞多数

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